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実はフェミニズム関係なし?metoo直撃映画『ゲティ家の身代金』

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metoo運動の直撃を受けた作品として公開前から大きな注目を集めていた映画『ゲティ家の身代金』が、5月末より日本公開されています。

劇場に観に行ったときは空席が目立っていたため(ハズレか?)と心配でしたが、これおもしろいよ!!すごく重厚なサスペンスです。

 

世界一の大富豪の孫が誘拐され、身代金は50億円。ところが爺ちゃん「払わない」と言うもんだから、ママ大変!というのがザックリあらすじ。人質の母親は誘拐犯と義父、双方と交渉しながら息子を救い出そうと奮闘します。

 

孤立無援で戦う母…と聞くと、『フライトプラン』『チェンジリング』のような“強い女性”の活躍を描くフェミニズム的な作品だと思うかもしれません。

ところが全編を観てみると意外なことに、フェミニズムは本作のメインテーマではないし、そもそも主人公は母親ではなかったんだと気づかされます。

 

 

 

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本作は中流階級のシングルマザー・ゲイルの息子・ポールが誘拐された事件をめぐるサスペンス。この事件は1973年に実際に起きたものです。

身代金は1700万ドル(50億円)と超高額。なぜならゲイルの元夫の父親、つまりポールの祖父は、世界一の大富豪ジャン・ポール・ゲティ(以下:ゲティ爺)だったからです。

 

このゲティ爺を演じて“いた”のは、ケビン・スペイシー。『ハウス・オブ・カード』などに出演していた超人気俳優でした。

 

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(上司にしたくない男ナンバーワン ※左端)

 

ところが2017年のmetoo運動でこれまで行っていたセクハラの数々が暴かれ、スペイシーは業界追放となります。この騒動、なんと『ゲティ家の身代金』全米公開の1ヶ月前

 

www.cinra.net

 

作品の準主演がスクリーンに映っちゃいけない存在になった以上、ほぼ完成されていた本作はお蔵入りか・・・!?と思われるも、リドリー・スコット監督は漢(オトコ)だった!

即座に名優クリストファー・プラマーの代役出演をとりつけ、スペイシー出演のシーンをすべて撮り直したのでした。

 

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(御年88歳。本作でアカデミー賞助演男優賞ノミネート)

 

こんな事情だったので予告編を探すとスペイシー版(英語のみ)とプラマー版の2つが見つかるのですが、見比べると「まったく同じ役なのに、役の解釈がぜんぜんちがう!」と驚かされます。

特に↓この「ナッシング」のシーン。

 

(スペイシー版予告編全体はこちら) 

 

(プラマー版予告編全体はこちら)

 

スペイシーは「ナッ・・・シング⤵︎」と厳しく強い意志を感じさせる語調。

ところがプラマーは「ナッシン⤴︎★」ととってもお茶目!半笑いすら浮かべてます。

 

それによって、続くゲイルの表情も異なる印象に。スペイシー版では「そんな・・・(絶望)」って感じなのに対し、プラマー版は「ジジイ今なんつった?(湧き上がる怒)」って感じです。まったく同じ驚愕の表情なのに!

 

 

www.youtube.com

(母・ゲイルが声明を出すシーン。サムネイルはゲイルではなく記者) 

 

えっ?「ナッシングって何?」って?

これはマスコミの「身代金いくら払うんですか」への返答。そう、ゲティ爺は身代金の支払いを拒否するんです。

そして犯人にも母親ゲイルに対しても、一切の交渉をつっぱねます。

 

一応「私には孫が複数いる。身代金を払ったら孫たちが片っぱしから誘拐される」と、テロリストとは交渉しない的な理由をつけていますが、傍目には「いや、あんた金が惜しいだけだろ」としか見えん・・・だって半笑いだもん、ずっと!

「誤解しないでほしい、ポールのことは愛している」って、絶対嘘だろ!って感じなんです。だって半笑いじゃん!終始半笑い。

 

しかもこのゲティ爺、一代で財を築いた人だからか、ものすごいケチなんです。一流ホテルのスイートルームに泊まっても「クリーニングサービスは高い」と自分で自分のパンツ洗うくらい。

美術品には目がないんですが、それでさえ「このオブジェは最初の価格からいくらいくらまで値切った(ドヤ)」との武勇伝がついてきます。

 

しまいには(この「拒否」ってまさか、値切りなんじゃ・・・?値切りって完全拒否よりゾッとするぞ・・・だって、人の命だぞ・・・?)なんて思えてきます。

でも(値切るってことは、一応金を払う気はあるわけで、やっぱりポールを取り戻したいのかな?)とも思ったり。

 

成り上りという背景、矛盾する言動、そして半笑いが、ゲティ爺を「血も涙もない傲慢な老人」と単純にタグ付けできない印象にしています。

どこまで本気でどこまでふざけているのか、ポールを愛しているのかどうでもいいのか、ゲティ爺は作中で最もミステリアス。最も本心を掴みにくいキャラクターです。

 

 

 

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そんなミステリアス・ボーイのゲティ爺ですが、さすがに何もしないわけではなく、元CIAのボディガード・チェイスを事件解決のためゲイルの元へ派遣します。

 

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(インテリマッチョ)

 

チェイスを演じるのはマーク・ウォールバーグ。『テッド』の自堕落な主人公役で有名ですが、『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』では筋肉信仰に取り憑かれたトレーナー役を演じるなど、すばらしい筋肉を誇るマッチョ俳優です。

 

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(3人の平凡なマッチョがおぞましい犯罪に手を染めるブラックコメディ ※右端)

 

このウォールバーグも実は、metoo運動のやり玉に上がりました。叩かれた理由はセクハラではなく賃金問題


前述の再撮影にあたり、役者の方々にもちろん出演料が追加で支払われたのですが、ウォールバーグの受け取った金額は主演女優ミシェル・ウィリアムズのなんと100倍(150万ドル、約1億6000万円)

ウィリアムズとウォールバーグはともにメインキャストで、出番の量に大きな差はありません。「なのになんで?」→「男女の賃金格差だ」と非難されたのです。

 

ウォールバーグは批判を受けるとすぐに、再撮影のギャラを全額寄付。「状況をよくわかってなかった、あれはとても気まずかった」とトホホな感じの声明を出しました。ちょっと可哀想かも・・・

 

esquire.jp

 

でもね・・・世間の皆さんが怒るのも無理ありません。だってウォールバーグ、まったく仕事してないもん!

 

「してたよ」って?いや、この人、ぜんぜん役に立ってないんですよ。すごい筋肉してるのに。ストーリーと無関係の腕立てトレーニングシーンとかあるのに。ずーっとピチピチのスーツ着て、はちきれそうなバストラインを強調してるのに。

 

 

「これが交渉だ!」って電話できついこと犯人に言って、ぜんぜん犯人を説得できないでただ怒らせてるし。この人が怒らせた犯人をゲイルがなだめたりしてるし。ゲティ爺の説得だって、結局作戦はゲイルが立ててるし。この人はゲイルの作戦に乗って、ラストでちょっと怒鳴るくらいです。

 

元CIAでしょ!?普通のおばさんに負けとるじゃん!!

 

唯一役に立つのは、ベビーシッターくらい。子どもには好かれるらしく、ポールの幼い妹とテーブルゲームしてキャッキャなつかれてます。

 

いや、それ筋肉いらないから!!!

 

 

www.youtube.com

(こんなタイトルが君のインタビュー映像にはつくんだ、マーク!みんなが君に期待してるのは筋肉なんだ!!!)

 

 

・・・・・・・・ハッ。まてよ。

 

なぜマッチョな俳優は必ずマッスルアクションをやらないといけない、と、わたしは考えているんだろう。

なぜわたしは「ちょっと!アクションやらないってんなら、せめて腕立てシーンはTシャツ脱ぎなさいよ!」とか考えてるの?

 

まるで「長澤まさみ主演ってんなら、せめて胸の谷間くらい見せろや!なんのための巨乳だ」なんて、薄汚いヤジを飛ばすおっさんみたいじゃないの!やだ!

 

いやはや、セクハラはやっぱり他人事じゃないですね。「女のくせに」と同じく「男のくせに」「ムキムキのくせに」も当然、セクハラな発想です。気を付けなければ。

気を引き締めるために、とあるアメリカ人女優が言ったという名セリフを胸に刻んでおきます。

 

(『レナ・ダナム、脱ぐんじゃねー!俺はお前の裸なんか見たくねー!』『人に見せる裸じゃねーだろ!』とのヤジに対して)

『あなたたちは女の人の裸(※「マッチョな男の筋肉」に置き換え可)っていうのは男(※「おばさん」に置き換え可)に見せるためにあると思ってるの?

そうじゃないわよ!私たちは人間なんです』

(miyearnZZ Labo)

 

シュン・・・ごめんなさい。

 

 

 

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というわけで、図らずしもフェミニズム問題に深い関わりを持つこととなった本作。

ストーリーも「ママ頑張る!」でフェミニズム的だし、運命を感じるなぁ・・・なんて、観る前は思っていました。

 

ところが実際観てみると「あれ?これ別にフェミニズム映画じゃないかも?

 

物語の前半のあるシーンで、ゲイルがもともと作中最強キャラのゲティ爺にとって唯一の天敵だったことが明らかになります。

それは彼女と夫(ゲティ爺の息子)の離婚協議のシーン。ヤク中アル中でほとんど廃人の夫から子ども達を引き離すべく、ゲイルは単独親権を望みます。しかし協議の相手は夫ではなく、超一流弁護士団を引き連れたゲティ爺。

「親権ねぇ、うーん、どうしようかなぁ」と、ゲティ爺は例の半笑いでノラリクラリ。なんとか慰謝料や財産分与を安く抑えようと(ここでも値切る!)交渉してくるんですね。

 

それに勘づいたゲイルはゲティ爺にある取引を突きつけます。「今すぐ単独親権に同意するなら、お金は一切いらない。全部放棄する」と。

 

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(予告編より)

 

これにはゲティ爺、ビックリ仰天!「なんか裏がありそうだ・・・」との疑いの目すらゲイルに向けます。

 

つまり、ゲティ爺は人生における重要ランキングで「金」が不動の1位の人なんです。そして誰も彼も自分の金に群がってくるという実体験から「結局みんな金が欲しいんだ」との考えを、嫌悪感を抱きつつも確信していました。

だからゲイルのような「子ども」が不動の1位の人が理解できないんです。

 

そして、ゲティ爺はゲイルの提案を飲みます。なぜ?孫と離れ離れになってもいいの?やっぱり孫なんてどうでもいいの?

そういう問題じゃないんです。「こっちの方が金銭的におトク」という選択肢を提示されたら、ゲティ爺はそちらを選ばずにはいられないんです。なぜって、彼は世界一のケチだから!!!

 

このシーンによって、観客はゲティ爺の弱点に気づきます。ゲティ爺は金を失う選択肢は絶対に選べないのだと。「選ばない」じゃなく「選べない」なんだと。

だからゲティ爺はゲイルに絶対かなわないんです。なぜって、ゲイルは「金か子どもか」で1mmも迷わず「子ども」を選ぶ人だから。

 

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(公式本編映像より)

 

この事実こそ、ゲティ爺の半笑いでごまかされた本心を読み解く鍵となります。

もしかして身代金値切りも交渉を一切拒否したのも、ゲティ爺が犯人ではなくゲイルに仕掛けた駆け引きだった・・・!?

 

ゲティ爺が本心で一番ほしいと望んでいたものはなんだったのか、それは、彼の最後の出演シーンで痛烈に暗示されます。

そう、本作の主人公はゲイルではなくゲティ爺であり、本作は金にとり憑かれた老人の悲劇の物語だったのです。

 

 

 

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なんかえらい長くなってしまいましたが、そのくらいサスペンスとして謎めいていて、ヤキモキハラドキに満ちた作品でした。

 

マッチョの裸が見れるわけでもなく、おまけに実は美魔女ではなくジジイが主人公という一見サービス精神ゼロな映画ですが、大丈夫!ちゃんと面白いです。

騙されたと思って観に行ってみてー!!

 

 

 

getty-ransom.jp

 

 

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女が男同士のラブラブにときめくのはなぜ?『君の名前で僕を呼んで』

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“美しすぎるゲイ映画”と熱い注目を集める『君の名前で僕を呼んで』が全国公開されています。

 

わたしは封切りから半月以上経って観に行ったのですが、場内は9割女性でほぼ満席、しかもエンドロールが終わりきるまで誰も席をたたないという。

そんな静かなる熱狂も本編を観れば納得しかなくて、とにかくもう主演2人が美しい!!!

特に17歳のエリオ少年。演じているのは奇跡の美青年、ティモシー・シャラメ。1995年生まれで実際には二十歳過ぎで180cm以上の長身、女の子とのツーショットでは普通に男らしく見えます。

ところが相方のオリヴァーと並ぶと、完璧に初々しいヒロインなんですよ!演じてるアーミー・ハマーが195cmもあるからなんですけど、それだけじゃなくて。

 

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エリオママ美魔女(映画公式サイトより)

 

本作は北イタリアの避暑地で出会ったエリオとオリヴァーのひと夏のラブストーリーなのですが、一体どんな映画かというと、映画評論家の町山智浩さんがすごく端的かつ的確にこう表現しています。

 

この2人がずーっとイタリアの美しい自然の中で、プールで遊んだり、日光浴をしたり、ピアノを弾いたり、芸術について語ったり、美味しいものを食べたりする映画です。(miyearnZZ Labo)

 

なんじゃそりゃって話なのですが、本当にこのまんま。

132分の上映時間のうち1時間半以上は、この2人の恋を出会いから接近、すれ違い、アタック、拒絶、ヤキモキ、ベッドイン、イチャイチャ、すれ違い、イチャイチャ、別れ、その後に至るまで、ただひたすら美しく麗しく描き出すのに費やされます。

 

そんなもん誰がおもしろがって観るの?と男性なら思うかもしれません。でも女性なら・・・観たいよね?この時点で観たいよね?

 

 

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それにしても、なぜ女は男同士のラブラブを見ると「ウヘヘ」と舌なめずりして喜ぶのでしょうか?

 

えっ?「そんなもの見て喜んでるのは、あんたみたいなモテないオバさんだけだろ」って???

なんてことを!そんな意見は、偏見以外の何モノでもないですよ。『君僕』に行ってごらんなさい、若くてカワイイ女の子たちがキャッキャ喜んで観てますから!

 

それにねぇ、あとねぇ・・・そう、『ガイコツ書店員 本田さん』っていう書店員さんが実体験を元に描いた漫画でも、若くてカワイイ外国人女子がBL漫画をウキウキ購入していたとの証言が記されているし、そういうのはモテないとかオバさんとか、関係ないの!!!OK?ふぅ・・・。

 

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感想(3件)

 

では改めて、なぜ女性は男性同士の愛の物語に胸をときめかせるのでしょうか?

これはもう本当に一言「自分が完全に傍観者でいられるから」に尽きると思います。

 

少女漫画などで主人公をサエない女の子にし読者が感情移入できるようにするのと真逆、「異性」の一線を引くことで根本的なところを完全に他人事にする。それによってストーリー(場合によってはエロ)を単純に楽しめるようにする。そういうことなんだと思うんです。

 

それは何も、男性同士なら「モテる女はイケメンとイチャつけていいわねぇ、チッ」と嫉妬しないですむから・・・だけじゃなく。

だって男性もモテるモテないに関わらず、美女同士がイチャイチャしてるの観たらウヒョーってなるじゃないですか。『フレンズ』でレイチェルとモニカがキスしてるの見て、ジョーイ喜んでたじゃないですか。ジョーイ、いい女いっぱい抱いてたのに!

 

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感想(0件)

 

実際のところ、わたしは同じ理由で海外映画が好きです。

邦画をぜんぜん観ないのは「日本映画はダメだ」とか思っているわけじゃなく、舞台が日本で登場人物も日本人だと、自分のリアルな生活とダブってごちゃごちゃして、ストーリーを単純に楽しみにくいんです。

 

本作だって、エリオが男の子だからあのラストも「オリヴァー・・・なんでよ・・・」くらいですんでますが、これ、もしエリオが女の子だったら大変ですよ。ガチで感情移入した劇場中の女が総立ちして「オリヴァァァァッ!あんたって男はこの野郎!!!」ってなってますよ。ええ、間違いなく!

 

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「僕がどんなに幸せかわかるかい?」とか言ってたくせに……口だけ男!(映画公式サイトより)

 

 

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さて、わたしがBL風味の映画が好きなのはモテない女だからではないと力強く言い訳し終えたところで、最後に本作のメッセージについて考えてみたいと思います。

 

というのも本作、同性愛のラブストーリーながら『チョコレートドーナツ』などの作品とは異なり、差別とかタブーとかの描写はほぼゼロ

エリオのガールフレンドも彼の恋を理解してあげるし、エリオの両親も息子とオリヴァーがいい感じになってるのに気づきながら、2人を隣室に寝泊まりさせて、最後は2人きりで旅行までさせています。

もはや「いや、エリオの両親理解ありすぎだろ!?息子まだ17歳だぞ!?」と見えるかも。

 

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やっぱり美しいエリオママ(映画予告編より)

 

しかし、実はこれこそが本作の核心。

終盤、オリヴァーが去った後の家で、エリオの父は息子にある話をします。この話によって、両親がどんな気持ちでこうも2人に対し理解ある態度をとっていたのかが明らかに。

 

この父の言葉は、もはや若くないすべての人の心にグサッときます。

どんなグサかというと、その人の過去によって変わるグサ。過去が“あっち”の人にとっては自分を肯定してもらえたようなグサだろうし、過去が“こっち”の人にとっては心をえぐられるようなグサです。

 

いずれのグサにしてもすごく鮮烈で、ぜひ本編を観て味わってほしいのでネタバレしないように言うと「時計の針を戻すことは絶対にできない」これがエリオの父、そして本作からのメッセージです。

 

このメッセージって、ちょっと思い出そうとしただけでも、例えば太宰治が『葉桜と魔笛』で同じようなテーマを描いていたりするんですよ。こちらは舞台が明治40年くらいの日本で、主人公は異性愛者の病弱な美少女なのに。

でも別に意外じゃないんです。このメッセージをテーマにした物語って、たぶん探せば世界中にあると思います。

 

これってすごくおもしろいことじゃないでしょうか?

だって世界で十指に入る美男をキャスティングし同性愛をバァンと全面に出して、いっそ現実味がないほど美しく麗しい演出をしながら、そのメッセージは文化も時代も性別もノンケかゲイかも無関係に、地に足のついた人生の真理なんだもん。

 

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(映画公式サイトより)

 

 

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と、ネタバレしない程度の回りくどい話をこれ以上クドクドクドクド書いてもしょうがないので、もう未見の人は男も女もとりあえず観てくれというのがこの『君の名前で僕を呼んで』という映画です。

 

ただし「ゲイ映画なら傍観者気分で楽しめるだろう」なんて気持ちで劇場へ行くとグサリと火傷させられるので、お気をつけあれー!

 

 

 

cmbyn-movie.jp

 

 

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『名もなき野良犬の輪舞』は女子のための絶品キュン死映画だよ!

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(まじか・・・!?)

 

平日にしては座席の埋まった館内を見渡して、私は思わず呟きそうになりました。

背もたれからピョコピョコ覗く頭頂部のどれもが、明らかにおじさんのそれだったからです。

 

いえ、男性が楽しめない作品だなんて言いません。なんせジャンルはバイオレンスアクションだし、登場人物の95%はおじさん。むしろ男性向けの映画とすら紹介できる作品かもしれない。

 

それでも・・・それでもわたしは主張したい。

本作『名もなき野良犬の輪舞』は、女子にこそおすすめしたい、絶品キュン死映画だと!!

 

 

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『名もなき野良犬の輪舞』は刑務所内で出会った2人の男の、絆と破滅を描く韓国ノワール映画。物語は刑務所内のシーンと出所後のシーン、2つの時間軸が交差しながら進んでいきます。

 

真っ赤なスポーツカーが差し色に使われていたりと、美術や演出はスタイリッシュ。が、銃を中心とした迫力満点のバイオレンス描写や、女刑事1人を除きほぼ女性皆無という顔ぶれから、一見非常に男くさい映画です。

 

しかし、バイオレンスもおじさんの顔面力も、しょせん舞台装置にすぎません!

本作の真骨頂は、セクシーな中年悪党・ジェホ(ソル・ギョング)と無鉄砲な天然小悪魔・ヒョンス(イム・シワン)のラブ・アフェアです!

 

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 ↑こちらがジェホ

密輸を手がける犯罪組織の幹部で、服役中は刑務所内のトップに君臨。

コワモテで威厳たっぷりなのに茶目っ気があり、男なら思わず「アニキ!」とついていきたくなりそうな悪党です。

 

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 ↑こちらがヒョンス

ケンカっ早く、勝つためならズルもするところがジェホの目に止まります。

色白の中性的な美青年で、本作の実質ヒロイン。だってジェホにとってファム・ファタールだもん!わたしが子分でもジェホに「目を覚ましてくれよアニキ!!」と泣きつきますよそりゃあ・・・

 

本作のしょっぱなに映されるのは、出所するヒョンスを一足先にシャバに出ていたジェホが赤いスポーツカー(出た!)でお迎えするワンシーン。そして過去にあたる、2人が刑務所内で絆を深める様子が、現在のラブラブシーンを交えつつ描かれていきます。

 

先に相手に興味を持ったのはジェホ。危険を顧みず誰にでも立ち向かうヒョンスに、刑務所内の大統領として忠告をしつつ「お前はアザまでキレイだけどな」と軽くアプローチ。

ところがその直後、刑務所内に新興勢力が台頭し、ジェホはトップの座から追われるはめに。シュンと小さくなって自室に引きこもるジェホを見て、ヒョンスは彼のために一計案じ、見事形勢をひっくり返してみせます。

 

「“ボウヤ、頭を使わなきゃダメよ”みたいな態度だったのに、ヒョンスの方が頭切れるじゃん。ププッ、ジェホってカッコ悪〜」と油断しきった我ら観客(おそらくヒョンスも)。

そんな我々の半笑いに見守られる中、ジェホが始めたことは、トップから引きずり下ろした敵ボスへの酸鼻きわまる拷問。しかも超楽しそうに高笑いしながら。

(あっ・・・このおじさん、ガチでヤバいやつだ)と、観客もヒョンスもここで初めて思い知ります。

 

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はじける笑顔。ちなみに拷問中(予告編より)

 

とはいえ、この一件で仲良しになったジェホとヒョンス。「友達以上恋人未満」の距離感で、一緒に囲碁をやったり連れションしたり、キャッキャと蜜月を過ごします。

 

そこで、思いがけない急展開が!!!ヒョンスの病弱な母親が急死したとの知らせが飛び込んできたのです。

母親思いのヒョンスは狂ったように泣きわめき、せめて一目会わせてくれと望みます。しかし刑務所にいるため葬儀にも出られない。

絶望したヒョンスは自分を慰めようとするジェホの言葉にも耳を貸さず、逆にぶちキレてジェホに殴りかかってしまいます。

 

初めて自分に牙を剥いたヒョンスに、容赦なく反撃するジェホ。

 

一心不乱に殴り合う2人。

 

ジェホの熱いこぶしがヒョンスのつややかな頬をとらえ、その赤い唇からあふれるベルベットのような血が薄暗い部屋の汚れた床を濡らし・・・

 

これは・・・ロッキー3と同じなのでは?メタファー・ベッドシーンだわよこれは!!

 

そしてついにヒョンスはジェホに言います。

 

「アニキ、もうあんたをダマしたくない

 

俺は

おれは・・・



・・・刑事なんだ」

 

来た―――――――!!!(予告編で知ってたからね)


予告編でネタバレしてるじゃんって?いやこっからなんですよ、本当のラブアフェアは!

 

だってこれは刑務所のシーンで、出所後も蜜月が続いてるんですもん。

つまりヒョンスは刑事で潜入捜査のためにジェホに近づいたんですが、ジェホと恋に落ちた(心酔したとも言う)ので寝返ったんですね。

 

しかしこの告白を境に、2人の関係は少しずつ歪み始めます

 

組織に迎え入れてからも、ジェホのヒョンスへの愛は深まる一方。

ヒョンスが部下を連れて敵との交渉に赴いたら、建物の外でヤキモキヤキモキ待機して、仲間に「あのガキが心配なんだろ?」って秒でばれて苦笑いして、「あーもう、行くぞ!!」って我慢できずに自分も乗り込んじゃう。

 

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愛するヒョンスの元へ駆けつけるジェホ(映画公式サイトより)

 

それでいて、ヒョンスのことを信じられないんですね。ずっと裏切り裏切られる世界に生きてきたから。

ふとした瞬間に猜疑心が愛を憎悪に変えて、ジェホを揺さぶり、2人の絆に亀裂が走ります。

 

信じたいのに信じられない。そんなジェホにヒョンスはこう誓います。

「あんたが俺を信じなくても、俺はあんたを信じる」

 

こ、こんなこと言われたら、さすがのジェホも氷の心がとろけちゃう・・・

 

と、ここで、ヒョンスにとっても我ら観客にとっても、まったく予想だにしない「ある真実」がスクリーンに。えええこれはっ・・・!あ~・・・

 

でもね・・・やっぱりわかってましたよ。2人を見ていれば。

彼らには「円満なままトモシラガ」なんて未来はないって。この愛は刹那的なものなんだって。

 

わかっていたけど、でも、そう、壊れるのはわかっているんだけど、一体いつ、どう壊れるのかは最後の一瞬まで予想がつきません。

ジェホが彼を殺すのか、ヒョンスが彼を裏切るのか、それとももしや2人とも・・・?

 

あああ読めない!なんて間にも彼らの愛憎はどんどんヤバい方向に!あああどうなってしまうの、2人の愛の結末は!?

 

 

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なんて具合に、女子(+我らおばさんも)なら座席で身もだえすること間違いなしな傑作キュン死映画『名もなき野良犬の輪舞』。

 

「バイオレンス映画はちょっと」なんて言わないで!上映始まったらジェホとヒョンスしか目に入らなくなるから。血しぶきとか突然の銃声とか断末魔の絶叫とかに気を配る余裕なんてないから!

 

映画館でキュン死したい女子の皆さん、ぜひとも今すぐ劇場へ!!!

 

 

映画公式サイトはこちら→ 

 

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SRファンには絶対観てほしい負け犬ラップ映画『パティ・ケイク$』

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海外映画好きなわたしですが、マイベストムービーTOP5にガッツリ食い込んでいる邦画がひとつだけあります。入江悠監督作『SR サイタマノラッパー』です。

 

【中古】 SR サイタマノラッパー /駒木根隆介,みひろ,水澤紳吾,入江悠(監督、脚本),岩崎太整(音楽) 【中古】afb

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(2018/5/9 07:57時点)
感想(0件)

当時無名だった入江監督が自身の貯金で製作した低予算作ながら、ミニシアターでの上映を皮切りにジワジワ口コミで人気が広まり、ついには大ヒットを記録。まさにインディペンデント映画のシンデレラ

 

この時点でもう5億点ですが、そうした背景とは無関係に内容がすばらしい。とにかく登場人物みんなカッコ悪くて最高!カッコ悪いのにみんな大マジなのが最高!大マジなのにみんなカッコ悪いまま抜け出せないのが最高!

そしてカッコ悪いのも大マジなのも抜け出せないのも「これわたしなんじゃないか」と思わせてくれるほどのリアリティでもって、突き放して描いているところが最高!!

そしてそして、そんなにみんなに冷たかったのに、ラストであんな・・・あああ最高!!!

そんな最高な映画です。

 

「ぜんぜんわかんねーよ」って?もういいから観てちょうだい!観てくれないなら、もう話すことは何もないわ! 

嘘よ!待って!帰らないで!もう少しだけここにいて!

 

 

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今回ご紹介したい映画は、現在公開中のラップ映画『パティ・ケイク$』。 

同じラップ映画でも『SR サイタマノラッパー』が手作り感あふれる映画だったのに対し、こちらはまさにプロが作った映画という印象です。特に作中最重要シーンであるラップを歌う場面は、ここだけ切り取っても十分見応えのある作品になるほど、映像・音楽ともにハイクオリティ。

 

 

それでもこの2作、すごく重なるしリンクする作品なんです。パクリとかそういう話ではなく、根本的なテーマが共通している。

 

『SR サイタマノラッパー』は埼玉の片田舎に暮らす青年・IKKUが、『パティ・ケイク$』はアメリカの田舎町に暮らす若い女性・パティが主人公。

2人とも20代、ぽっちゃり体型、実家暮らし、周囲からバカにされがち、ラップが大好き。ラップで成功し地元を出る日を夢見て、日々ラップの練習に励んでいます。

 

ところがちっともうまくいかない。IKKUは「俺たちは埼玉から世界に発信するんだよ!」と女友達にラップについて語るも「おまえ宇宙人かよ」と一蹴されるし、パティは「名前はキラーPよ!」と母親にラップ活動を伝えるも「おおこわい、娘が殺人鬼になるっての?」と茶化される。

 

おまけに「ついに来た!チャンスだ!」と期待したある機会も、2人を待っていたのはみじめな結果。IKKUは観客(公務員の方々)を前にしたステージ、パティは神と崇める憧れのラッパーと一対一で、持てる力の全てを尽くしたラップを披露しますが、いずれも何の感動も相手に与えられず冷たい反応を返されます。

 

もちろん重ならない部分もたくさんあって、例えばIKKUはニートで妹からもコケにされてますが、パティはがむしゃらに働いて飲んだくれの母と病気の祖母をサポート。母や祖母との関係性もテーマの1つになっています。

また、IKKUは全編通して女の子とチューもできないけど、パティには山小屋で「ボブ・・・💕」みたいなほほえましい展開も。うっかり死霊でも蘇らせて喰われちまえ、ケッ。じゃなくて、主人公のキャラ設定こそ似ているようで実は違うんですね。

一番大きな違いは、パティには音楽の才能がありそうなのに対し、IKKUにはなさそうなこと。この違いが2作のラストの違いを生んでいます。

 

それでも「この2作は同じテーマだ」と感じるのは、夢を見て、努力して、期待して、踏みにじられて失う経験をした2人が、最後に歌うラップがすごく重なるから。

2人ともそうなって初めてカッコつけたラップではなく、カッコ悪いところをむき出しにした思いをラップにできたんです。 

 

これってラップに限らず、多くの人が経験することなんじゃないでしょうか。カッコよくなれると信じて夢を見るけど、現実に打ち破られる。そこでどうしたらいいのか?その答えこそが、この2作のテーマの根本的なものだと思います。

 

 

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とにかく『パティ・ケイク$』はおもしろかったけど『SR サイタマノラッパー』は観たことない人 or SRファンだけど『パティ・ケイク$』は観てない人は、とにかく絶対損はしないから、とにかくレンタル屋 or 劇場へGOして!じゃなきゃ、もう話すことは何もないわ!

嘘じゃないわ!

 

(※このようにラップ映画を観た後はテンションと言葉使いがややおかしくなるので、大事な用事のない時の視聴がおすすめです)

 

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這ってでも観に行きたい5月公開新作映画おすすめ5作品

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夏をひかえたポカポカ陽気が嬉しい5月。

天気の良い休日にはご家族で旅行やお出かけを満喫しておられる人も多いのではないでしょうか?

わたしもそんな日はついウキウキし、ハイボール濃いめ500ml缶片手にコンビニ惣菜をつつきつつ延々Netflixを流し見して過ごしております。

 

さて今回は5月公開の新作映画のなかから、インドアのわたしが這ってでも劇場に見に行く気マンマンのおすすめ5作品をご紹介します!

 

 

 

名もなき野良犬の輪舞(5月5日公開)

 

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第一弾は本日公開の韓国ノワール映画『名もなき野良犬の輪舞(ロンド)』。

誰も信じたことのない無慈悲なヤクザと、何も失うもののない無鉄砲な若者の歪んだ絆を描くバイオレンスアクションです。

 

予告編を観ると「これはもう間違いなく“THE 漢”な映画だろ~~~!と否応なく期待が高まります。なんせ女性はサブキャラのチーム長と“スポーツカーでイチャイチャする美女”役の美女くらいしか出ない。そのうえ「お前はアザまできれいだ…」なんてセリフが!!

こんなにカワイイと思ってた弟分が実は刑事だったと知ったら、アニキの愛はどうなってしまうの~~~!?

 

というBL的ハラハラドキドキと『新感染』『アシュラ』などを手掛けたアクション監督による迫力のバイオレンス描写が絡み合い、おぞましくも美しいエモーショナルな空気が漂っています。韓国ノワール新たな傑作の予感大!

 

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フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法(5月12日公開)

 

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お次はうって変わってカラフルな映画『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』。

ホットパンツの若い女性とショッピングカートに乗る少女のポップなビジュアルは『タンジェリン』のショーン・ベイカー監督新作としてかなり前から気になっていたのですが、待ってました~~~日本公開!!

 

主人公はママと2人暮らしの6歳の女の子、ムーニーちゃん。彼女はフロリダの暖かな日差しの中、ママや友達とキャッキャ無邪気に笑顔の絶えない日々を送ってます。まあ、なんてほほえましい映画…と思いきや、母親は無職でその日暮らし、家もないので安モーテルに仮住まいしているという実は過酷な貧困状況。おまけにモーテルが夢の国・フロリダディズニーランドの隣という皮肉なのかなんなのかな巧みすぎる構図。

 

さらに予告編終盤では児童保護局みたいな人たちがモーテルに乗り込んできて…えええムーニーちゃんとママは引き離されちゃうの!?お役所~~~!!

 

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犬ヶ島(5月25日公開)

 

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ここからは5月下旬の公開作です。まずはストップモーションアニメ映画『犬ヶ島』。

キャラクター色の強いデザインなのに犬の口の中とか妙にリアルで、かわいらしさと生々しさが入り混じった精巧なビジュアルは一度見かけたら忘れられません。

 

舞台は近未来の日本。ドッグ病が蔓延したメガ崎市は感染拡大を防ぐべく、すべての犬をとある島に隔離します。親友でもある愛犬・レックスを奪われた12歳の少年・アタリは、レックスを救うべく島に乗り込み…というお話なんですが、気になるのが言語。

 

予告編を見るとアタリ少年や一部の日本人は日本語で喋っているのですが、犬たちの共通語はなぜか英語(そう、犬もしゃべります)。アタリが日本語で話しかけると「何語だ?」とか言うんですよ。あんたら長崎っ子、もといメガ崎っ犬じゃないんかいというのは本編で確認するとして、意思すれ違い型コメディとしてもおもしろそう!?

 

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いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち(5月25日公開)

 

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お次はストーリー・キャラクター・顔面力すべてを使い、全力で笑わせにくるイタリアン・コメディ『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』。

落ちこぼれ科学者たちが政府の依頼を受けて、人生逆転するべくなんやかんやするお話らしいです。

 

“らしい”なんて言い方になるのは、予告編は見たけどあらすじなどはほとんど調べていないため。なぜ?だってこんなのおもしろいに決まってるじゃないですか?できるだけまっさらな状態で見たいじゃないですか!

もし本作がおもしろくなかったとしても、わたしはよく調べず1800円払った自分を責めないです。だって公式サイト見てみてくださいよ、あの顔面力!そしてこのタイトル!釣られないのはムリ!!

 

ちなみに3部作で製作されてるくらいなので、たぶんほんとにおもしろいです!

 

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ゲティ家の身代金(5月25日公開)

 

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ラスト1作はこちら、『ゲティ家の身代金』。

実際に起きた、世界一の大富豪・ジョン・ポール・ゲティの孫息子誘拐事件を、孫の母親(大富豪の息子の元嫁)の視点から描くスリリングなサスペンスです。

 

『チェンジリング』『フライトプラン』みたいないわゆる「我が子のためにママ超がんばる!」系映画なのですが、やや異色。まず子どもが幼児ではなく17歳の少年、しかもチャラチャラした雰囲気で「年上の娼婦相手にもドギマギしない」勇敢な子だそう。ちょっと待て、なんで同情しにくいキャラにするんだ!?実話だからか!

 

さらに大富豪の爺さんが「身代金いくら払うの?」に「ナッシング」なんて答えるからさあ大変。母親個人には高額の身代金を用意する手段はないためクソジジイの義父を頼るしかないんですが(この時点で相当試練)、ジジイは断固拒否。誘拐犯たちは激怒して「人質をバラバラにする」なんて言い始める。母親はどうするのか、はたして!?

 

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以上、5月公開のマストウォッチな5作品でした!

どれも(きっと)おもしろい作品なので、気になったものがあったらぜひ劇場へ足を運んでみてください!

 

 

 

マブリー最新作『犯罪都市』は『哀しき獣』とセット観がおすすめ!

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韓国で『アジョシ』超えの大ヒットを記録したバイオレンス・アクション映画『犯罪都市』が公開中だ。

主演は『新感染』で漢気あふれる活躍を見せた、マブリーことマ・ドンソク。一見ぽっちゃり体型ながら中身は全部筋肉というダイナマイトボディを誇る、今注目のアクション俳優である。

 

本作がどんな映画かについて、非常に明快かつ的確な表現をツイッターで見つけた。

 

 

そう、本作は完全にマ・ドンソクのアイドル映画である。『アジョシ』がウォンビンのウォンビンによるウォンビンのための映画だとしたら、『犯罪都市』はマブリーのマブリーによるマブリーのための映画なのだ。

 

 

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物語の舞台は2004年の韓国・ソウル。警察の強力班に在籍する刑事・ソクト(マ・ドンソク)の尽力もあってバランスを保っていた裏社会が、中国から乗り込んできた新興犯罪組織の暴走により市民を巻き込む混乱に陥っていく様を描く。

 

バイオレンス描写は堂々たる韓国ノワール王道だ。武器は匕首(短刀)と斧。飛び道具(銃)はなし。一、二度刺されたくらいじゃ刺されたにカウントされない。悪役に余裕のある当初は「腕一本につき1000万だゼ」みたいにショー的な見せ方をするも、彼らが追い詰められていくにしたがって「なんじゃああ〜ッサクサクサク」みたいに生々しさを増していく。

 

それでいながら『アシュラ』などと比べてとても観やすい印象なのは、ひとえにマブリーの“かわゆさ”によるだろう。

 

マブリーと新興犯罪組織のボス・チェンが対峙するのはクライマックスになってからで、それまではほとんど顔を合わせることなく、それぞれ表と裏の最強キャラとして描かれる。

が、裏でチェンが凄まじい暴力と流血で最強の座を誇示しているのに対し、マブリーは常にお茶目でキュートだ。

 

容疑者に「弁護士を呼べ」と言われたら「ほら、弁護士のスタンさんだ」とスタンガンを取り出したり、敵キャラに「お前ひとりか?(ひとりで来たのか?)」と聞かれたら「おう、まだ独身だ」と答えたり、コワモテ刑事という役所ながらクライマックス含め、全編ボケに余念がない。しかもすべてのボケをあの、眉から鼻下までを中心にグッと引き寄せたあのマジ顔で言うのだからたまらない。

 

それでいて自分よりも一回りデカい相撲取りみたいな用心棒を、パンチ一発でノックアウトしたりする。最高である。映画館で映画を見る醍醐味、すなわち「赤の他人である他の観客と一緒になって笑う」を本作は存分に味わわせてくれる。

 

と、これほどマブリーの魅力全開のアイドル映画なのに、本作にはマブリーを食うともわからんほど、つい目を離せなくなり見終えた後も深い余韻を残してくるキャラが一人だけいる。先ほど触れた裏社会最強キャラ・チェンである。

 

『アジョシ』に登場する裏ライバルキャラのベトナム人殺し屋には「ワルだけど子どもには優しい」という優良ポイントがあるのに対し、本作のチェンは純度100%の凶悪。「俺の嫌いなことは2つだけ、借金を踏み倒されることと嘘をつかれること」と明言しているように、頭にあるのは金だけだ。そのためにナメられないよう情け容赦ない行動をとる。

 

「まあ、悪役も徹底していたらダークヒーローになるよね」という理由ももちろんあるのだが、もし映画『哀しき獣』を観たことがある人なら、それ以上の感情をチェンに抱くと思う。 なぜならチェンの一味は朝鮮族(韓国系中国人)だからだ。

 

『哀しき獣』は 本作と同じく、韓国ノワール映画。主人公・グナムは朝鮮族(韓国系中国人)の男だ。

朝鮮族の人々の多くは生活が苦しく、韓国に出稼ぎに出るという。グナムの妻もそのひとりで、彼女のビザを取得するためにグナムは借金を背負う。ところが韓国へ行った妻から仕送りはおろか音信さえなくなってしまい、グナムは一人娘と母親を抱えて借金取りに追い立てられるはめに。

追い詰められたグナムは高額報酬の犯罪依頼を受け、顔も知らないある男を殺すべく、単身韓国へ乗り込んでいく。

 

メガホンをとったのは、韓国人監督のナ・ホンジン。彼は40%を朝鮮族が占める中国領を訪れた際、彼らの厳しい現実に愕然とし、「多くの朝鮮族の人が韓国に来ているのに、自分はそのことについて知らなすぎる」との思いからこの作品を作り上げたのだという。

 

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この物語では、紆余曲折のはてともかく依頼を完了したグナムに対し、依頼主の男は連絡を断つ。報酬はもちろん中国への帰りの船さえ手配しない。そう、グナムはヒットマンではなく鉄砲玉とみなされていたのだ。

当初はケンカっ早いが気の小さい普通の男だったグナムは、孤立無援のなか生き延びるために“獣”と化し、哀しい運命をたどる。

 

先に『哀しき獣』を観ていると、どうしても本作『犯罪都市』のチェンがグナムとダブってしまう。いや、基本は善だけど手を血に染めてしまったグナムに対し、チェンは生粋の悪だけど、それでもグナムを知っているとどうしてもチェンの背景に思いをはせたくなってしまうのだ。金への執着、ナメられないための残忍さ。それをチェンはどこから学んだのか。

狂犬にしか見えない絶叫をあげるラストを見ると、どうしても「彼もやっぱりグナムなんだろうか」と思わずにいられないのだ。

 

 

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長くなってしまったが、コメディとバイオレンスどちらのクオリティも高い『犯罪都市』 はアクション映画好きにぜひおすすめしたい。

 

そして、単品でも表のマブリーの魅力を堪能できる作品だが裏のチェンの魅力も噛み締めるために、ぜひ『哀しき獣』もあわせてみてほしい。作品としても陽と隠の面持ちのこの2作は、セット観するとおもしろさが2倍にも3倍にもなること請け合いだ。

 

 

『犯罪都市』公式サイトはこちら

 

 

★マブリー出演作ならこちらも! 

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友情、勝利、そして成長…ゾンビ映画『新感染』の既視感の正体は?

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なんだろう、この感覚・・・

すごく新しい印象なのに、どこかで、そう、どこかで見たことがある。

デジャブ?いいえ、思い出すのは少女の頃の、あの胸の高鳴り・・・

 

 

なんの話?そう、話はゾンビ映画新感染 ファイナル・エクスプレス』。

韓国発のサバイバル・パニック・ムービーです。

 

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(映画公式ホームページ)

 

カンヌ国際映画祭で入賞したとか、世界156ヵ国から買い付けオファーが殺到したとか、ハリウッドリメイク決定済みとか、ギレルモ・デル・トロが絶賛したとか・・・

あまりにも前評判が高すぎたため「ホントぉ〜?」と若干斜に構えて見始めたのですが、うわぁーおもしろかった!

 

どのくらいおもしろかったかというと【トンネルと少女の感動名シーン】にて、「大声出したらさっきピクって動いたゾンビに気づかれないの?w」と茶化しかけた自らを「それ今言う必要ある?」と冷ややかに突き放すくらい。

 

 

まずゾンビがすばらしく気持ち悪い。そして怖い。

 

最近のゾンビって足が速いのが主流ですよね?本作もそうで、ゾンビはめちゃくちゃ機敏。ところが死者の身体だからなのか、その動きは不自然にカクカクしています。

つまり動きにくそうにカクカクしながら凄まじい勢いで走るという、自然界ではまず見かけない生物なんです(生きてないけど)。

 

そいつらが飢えた暴徒と化し群れをなし「血!人肉ゥ!」と襲いかかってくるんだからたまりません。走れ!走れ!

 

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しかし本作の真骨頂は、ゾンビよりも人間ドラマ。

 

ここでちょっとあらすじを紹介すると、本作の主人公はエリートサラリーマンのソグ(コン・ユ)。別居中の妻の元へ娘を送り届けるべく、早朝の特急列車に乗り込みました。

乗り合わせたのはコワモテ男とその身重の妻、高校生の野球チーム、おばあちゃん姉妹、浮浪者っぽいおじさん、偉そうでイヤミおっさんなどなど多種多様な人々。

 

そして・・・ゾンビウィルスに感染した若い女性。

 

走り出した列車の中で発症し牙をむいた彼女から、密室空間での爆発的な感染がスタートします。1人噛まれてゾンビが2人、2人噛まれてゾンビが4人、4人噛まれて・・・のネズミ算で、車内は一気に地獄絵図。

未感染の人々は悲鳴をあげて逃げまどい、まだゾンビに侵されていない車両へ全力疾走で避難します。

 

ソグも娘を抱いて命からがら未感染の車両へ。ところがドアを閉めようとした時、通路の向こうに走ってくるコワモテ男と妊娠している女性の姿が。ソグは逡巡するもドアを閉めてしまいます。

しかし彼らの訴えを受けてドアを開け、2人が駆け込んだところで再び閉じ、間一髪でゾンビの侵入を防ぎました。

 

「俺たちを見捨てようとしたな」とつめよるコワモテ男に「みんなが危険だったからしかたなかった」と悪びれないソグ。

 

このシーンを皮切りに、ソグの本質的な人間性が明るみに出始めます。

お年寄りに席を譲ってあげる心優しい娘を「今は誰にも何も譲らなくていい」と小声で諌める。軍隊が待機するある駅に列車が停車し、乗客は保護ではなく隔離されるとの情報を得ると、コネを使って自分と娘だけ安全に避難できるよう手配。

 

そう、「自分さえよければ他人はどうでもいい」という価値観を、ソグは「常識」として持っていたんです。

 

これは・・・非常時においては間違っているとは言い切れないけど、人道的にはどうなんだ・・・うーん・・・。とりあえず「パパは自分のことしか考えてない。だからママは出て行ったんだね」との娘の意見に激しく同意。

 

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ところが駅で降車した人々を待っていたのは、ゾンビと化した隊員たち。

完全に不意をつかれた人々が命がけのUターンで列車に戻ろうとする阿鼻叫喚のなか、ソグの目に映ったのは、娘に今まさに飛びかからんとする1人のアーミーゾンビ・・・

顔面蒼白で娘の元へ駆け戻るソグ。しかしどう考えても間に合わない。うわぁぁぁっスアン(娘の名前)〜〜〜!!!

 

・・・とそこでアーミーゾンビが吹っ飛んだ!

やつに強烈なエルボーを食らわせ娘を救ってくれたのは、先ほどソグが当然の判断として見捨てかけたコワモテ男でした。

 

コワモテ男や野球少年たちは駅構内の仕切りドアから無事逃れた後も、ドアを封鎖しさっさと逃げるのではなく、ゾンビたちが迫ってくるなかドアを開けたまま、生存者にこちらへ避難するよう呼びかけます。

ソグは自身もゾンビに襲いかかられますが浮浪者風アジョシの上着ヘルプによって逃れ、なんとかドアまでたどり着き、彼らとともに安全(一応)な列車に転げこみました。

 

「他人は顧みない」を常識としている自分と「困った時は助け合う」を常識としている彼ら。この一連の出来事によって、ソグの心境に変化が生じます。成長と呼んだ方が適切かもしれません。その変化はこのあとのソグの行動に現れていきます。

 

初対面ではいがみあっていたコワモテ男との友情・・・主人公の成長・・・一致団結してゾンビ車両突破の勝利・・・あっこの既視感は、そう、ジャンプ。

 

このジャンプ的人間ドラマこそ、本作に単なる「優秀なゾンビ映画」以上の魅力を与えている要因です。古今東西を超えて人々が共感できるわかりやすさ。古典的だけど爽快、感動。

 

さらに、どんなに人に助けてもらっても心境に変化が生じず、ひたすら自分だけが助かろうとするイヤなキャラクターも登場するにいたっては思わず「わかってるぅ」と膝を打ちたくなります。

シルエットでも誰がどのキャラかわかりますからね、計算しつくされてますよこれは!「脚本が練り込まれてる」ってこういう作品を言うんじゃないでしょうか?

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韓国映画のレベルが高いことは周知の事実なので、本作の「映像作品」としてのレベルがハリウッド顔負けなことには、別に驚きません。今更そんな。

 

でもこのクオリティと規模のゾンビ大作で舞台がアジアって、多くの人が初めて目にするんじゃないでしょうか?少なくとも私は「ハイレベルのゾンビ大作×出演者がほぼ全員アジア人」の組み合わせに、“絵”としてすごく目新しい印象を受けました。

 

それでいてストーリーの根幹は、時代や国境を超えて誰もが共感できるジャンプ的古典。

見終えた後には「こりゃ全世界でヒットするわ」と納得でした。

 

普段アジア映画はあまり観ないという方や「ゾンビ映画はちょっと・・・」という方も、もしかつてジャンプっ子だったのならきっと楽しめるよ!とおすすめしたい一作です。

 

 

 

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