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クールだわ~…と見とれた男は小物だった映画『ローサは密告された』

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(映画公式サイト)

 

フィリピン・マニラのスラム街を舞台にした映画『ローサは密告された』。

 

劇映画(フィクション)の作品ですがドキュメンタリータッチが強く、貧困問題や警察の腐敗など、フィリピンの今を生々しく描き出しています

 

 

あらすじ

 

フィリピンのスラム街で暮らす、恰幅のいい肝っ玉母ちゃん・ローサ。
夫とともに小さな雑貨店を営むも生活は苦しく、違法薬物の売買に手を染めていた。

ある夜、店に警察の麻薬捜査グループが踏み込み、ローサと夫は逮捕されてしまう。
誰かがローサの店のことを密告したのだ。

捜査グループはローサに、罪を免れたければ情報を提供するか、大金を支払うよう強談。
ローサは知り合いの売人を警察に売る決心をするが・・・

 

 

ドキュメンタリータッチはあえてのことで、その狙いは強烈なリアリティを持たせること。 

役者にシナリオを渡さないことで生きたセリフを引き出したり、美術には実際にそのシチュエーションにあるものを使うなど、工夫を凝らしたそうです。

 

しかし、本作には「やっぱり劇映画!」と感じる、キメ台詞ならぬビシッと決まったキメシーンも。

警察の麻薬捜査グループのボスが煙草を吸うシーンはそのひとつです。

 

 

*****

 

 

ローサたちを逮捕した捜査グループは、シーンが進むごとに腐りっぷりを露呈します。

 

「禁止薬物、11条違反、ブタ箱いきだな。20万はらうなら助けてやる」と、司法取引でも何でもない権力をかさに着たユスリなんて朝飯前。 

押収した金で取調室で宴会を開き、逮捕者が少しでも妙な真似をしようものなら集団リンチまでします。

 

そんな中、押収した札束をなんら悪びれることなくポケットにしまい、外に出ていく捜査グループのボス。
ぶらぶら歩きながらタバコをくゆらす・・・

 

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本作は音楽や効果音がほとんど登場しませんが、ここは珍しく効果音が入っているシーン。

 

その効果もあいまって、このシーンのボスはちょっとゾクッとするほどクール。
腐りきったイヤな奴のはずなのに、ワルの魅力というか、不覚にも見とれてしまったほど・・・

 

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が、煙草をふかしもったいぶって歩く彼が向かった先は、

 

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え?ネコババしたお金って、上司に納めるの?

 

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さらに、ローサに売られて逮捕された売人が、捜査グループの目をごまかしてこっそり連絡を取ろうとしたのが「上級警部」。

 

え?逮捕されて警察に連絡?と観客が戸惑っていると、勘づいた捜査グループが「てめえ何やってんだ!!」と携帯を取り上げ、売人をボコボコに。

 

そして「警察や区長にチクったらぶっ殺すぞ!」。

 

もしかしてローサたちを逮捕した警察グループは、警察の中でもチンピラ並みの下っ端?

それで署長にみかじめ料というか、賄賂を貢いでいるの?

「20万必要なんだ」っていうのも、もしかしたら出世のため??

 

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*****

 


しかしこの辺りの事情については、映画公式サイトの丸山ゴンザレスさんのコメントを読むと、また見方が変わります。

 

おそらく本作に登場する警察官の月収は2~3万円といったところだろう。
そのため警察官は、幹部や署長への上納金を差っ引くといくら手元に残るのかを考えて見逃し料を計算しているのだ。

(映画公式サイトより)

 

こうした事情を知ると、ローサの一家が生活のために違法なことをしていたように、警察官が腐敗しきっているのも背景には生活のためがあるんだろうか・・・と複雑な気持ちに。

 

いやでも、押収した金で「大物が釣れたぜ!宴会だ、ビールとチキン買ってこい!」だし・・・ううむ。

 

ちなみに撮影は本物の警察署で行われました。

なんでOKが出たの?と不思議に思いかけますが、署の人々は映画の内容を知りながら、それを自分たちのことだと全く感じていなかったそう。

  

ううむ・・・

 


*****

 


本作は映画的な演出を感じるシーンが少なく、まるでスケッチするようにフィリピンという国を描き出しています。

 

だからこそこの記事でふれたような、スリリングさや情感をしっかり演出したシーンが際立っており、観ていて引き込まれずにはいられません。

特にラストのローサの表情は、今年観た映画の中で一番というくらい印象的。

 

映画『ローサは密告された』、ぜひ劇場でご覧ください!

上映館はこちら。

 

 

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