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思い出は美しく。一夜の恋を3つの視点から描いた恋愛映画『ポルト』

 

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昔話に花が咲く時、「思い出」というものは個人の所有物だと実感する。

 

同じ時、同じ場所にいたはずなのに、私が覚えていることを相手が覚えていなかったり、相手が覚えていることを私がすっかり忘れていたりするのだ。

 

私にとって悲しい思い出が相手にとってはいい思い出…なんて冗談じゃない、とも思うが、現実には起こりうるだろう。

 

ポルト』は偶然出会った男女の一夜の出来事を、それぞれの思い出から浮き彫りにする、一風変わった恋愛映画だ。

 

 

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上映時間は76分と短めだが、映画『ポルト』は3つの章から構成される。
エンタメというよりアート作品で、ストーリーはあってないようなものだ。

 

舞台はポルトガルの都市・ポルト。
カフェ、路地、アパートの一室、レストラン、それだけ。
少し面識のある男女が夜のカフェでばったり出会い、なんとなく意気投合して一夜を共にする。
それまで孤独に暮らしていた男はすっかり恋に落ちてしまうが、女の方は遊びのつもりという温度差からその後もめ、警察沙汰のイヤな別れ方をする。

 

物語は時系列通りではなく、前後もするし重複もする。
なぜなら1、2章の時間軸は2人が出会った数年後であり、物語は回想だからだ。
1章では男、2章では女が、それぞれの視点から数年前の一夜を思い描く。

 

意気投合したのがカフェなのは冒頭のセリフでわかるけれど、その後のシーンがどんな時系列なのかはなかなか明かされず、3章すべて観てようやくわかる。
パズルのピースが少しずつ埋まり1枚の絵が仕上がっていく、そんな映画なのだ。

 

 

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おもしろいのは、同じ一夜の出来事のはずなのに、男と女で思い出すことが違うところだ。

 

例えばレストランで会話するシーン。
2章、つまり女の思い出には、男がいかにも人と食事するのに慣れていないようにガチャガチャと音を立ててがっつくように頬張る姿が映る。

 

しかし1章、つまり男の思い出の同じシーンには、その姿はない。
食べる姿なんて本人の記憶には残らないが、女にとっては印象的な姿だったということだろうか。

 

思い出の相違で何より注目したいのは、2人の別れの場面。
あの一夜以来会ってくれない女の元へ男が押しかけ、女から拒絶されると玄関先で騒ぎを起こし、留置所に入れられてしまう…というシーンだ。

 

このシーン、1章ではしっかり描かれているのに、2章では一切映されない。
そのため1章では2人の恋が悲恋に見えるのに、2章では無邪気で楽しげな恋に見えるのだ。

 

もしこの一夜が、男にとっては辛い別れの記憶までセットになった悲しい思い出で、
女にとってはゴタついた別れ際は別としたむしろいい思い出なのだとしたら、なんとも皮肉な話である。

 

 

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最後の章である3章は、時間軸が2人の出会った夜に置かれている。
視点は男でも女でもなく客観的、つまり神視点だ。

 

まるで1、2章を踏まえて、「おのおのの言い分はこうです。じゃあ、実際のところはどうだったか観てみましょう」とでも言うような、ちょっと意地の悪い展開である。
「で、どうだったの?」と聞いてくれる人には「劇場で…」とおすすめしたい。

 

ただ、オチがどうとか真実がどうとか、そういった話にはならない。
『ポルト』は答えが用意されている映画ではないからだ。
現実がそうであるように。

 

映画『ポルト』は東京・新宿武蔵野館、大阪・テアトル梅田にて上映中。他5劇場で近日公開予定。

 

 

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