table pumpkin

映画『IT』をこれから観にいく人へ。…ピエロを笑わないであげて

f:id:kabo123:20171119075745j:plain

 

日曜のレイトショーにも関わらず、小さな劇場は満席だった。『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の恐ろし気なビジュアルはあちこちに出回っているのに。眠れなくなって明日の月曜に響いたらどうするつもりなんだろう。

 

しかしそんなことは杞憂に過ぎなかった。本作はモンスターが人をギョッとさせるタイプのホラーで、心理系のホラーのように引きずる怖さではない。その証拠に、館内に何度も響いた悲鳴はほとんど歓声に近いものだった。

 

舞台はアメリカの田舎町。ある大雨の白昼、内気な少年・ビルの幼い弟が姿を消した。おぞましいピエロ――“IT”に襲われたのである。何も知らないビルは友人とともに弟の行方を追うが、“IT”の魔の手は彼らにも伸びていた。

 

本作のモンスターとはもちろんピエロだ。ピエロの中にいるのが生身の人間でないことは冒頭で観客に伝えられる。じゃあその正体、“IT”とは何なのか?それが全くわからない。クライマックスまでは超常的な何かとしか情報がないのである。

 

f:id:kabo123:20171119080140j:plain

(映画公式サイト)

 

しかしヒントはあった。ピエロの行動である。ピエロはその子どもが一番恐れているものに姿を変え襲いかかっていくのだが、怖がらせるだけ怖がらせておいて、子どもを手にかけずにフッと姿を消すことが何度もあった。

 

なぜ?実はピエロにとって最も必要なことは、子どもを殺すこと以上に怖がらせることだったのである。ネタバレになるので詳しくは言えないが、けして面白半分ではなく切実な理由があって、必死で子どもを怖がらせていたのだ。

 

だからこそピエロの行動には演出が凝らされている。例えばあるシーン、小股でドドドッと子どもに迫っていく走り方。ゴキブリもそうだが小刻みな速足で接近してくるものに人は恐怖を感じる。ピエロは経験でそれを学んだのだろう。

 

さらに邦画も研究しているようだ。急に映り込んだ画面から飛び出すという貞子の十八番もピエロは採用している。いい手だと思ったのだろう。いや、同じく井戸を拠点とするモンスターとして貞子に憧れたのかもしれない。

 

なぜって、ピエロは十分に怖いが貞子には及ばない。貞子なら何もしなくてもターゲットは7日間勝手に怖がってくれる。しかしピエロがちょっとでも活動を休止しようものなら子どもはすぐ彼への恐怖を忘れ、ゲーセンで遊んだりする。

 

f:id:kabo123:20171119075820j:plain

 

そうした事情を知った上で作品を振り返ると、子どもを怖がらせんとするピエロの行動はいじらしく見えてくる。移り気な子どもたちを常に怖がらせておくために、ピエロは常にあの手この手だ。

 

やがてはケレン味さえ感じられてくるそれらの行動は、悲しいことに、最初こそ怖がっていた観客にも中盤以降は歓声でもって迎える。子どもたちも勇気凛々とピエロの家にのりこんでくるし、観てるとピエロが気の毒になってくる。

 

そこまで考えて、私はハッとした。
だから“IT”はピエロの姿をしていたんじゃないだろうか。

 

本物のピエロは子どもに間抜けだと思われて、笑われるのが役目だ。しかしピエロの道化は子どもを笑わせるために演じているものである。大人が見ると「大変だな」と感じることもしばしばだ。

 

「道化」と「モンスター」で方向は違うが、子ども相手に必死の演技という点は同じである。本作は実在の殺人鬼をモデルとしているが、あくまで物語として、ピエロほど“IT”の仮の姿としてふさわしいキャラクターはいないだろう。

 

道化役は一番難しいと聞いたことがあるが、モンスターも素ではなく演じるとしたら大変なのかもしれない。未見の方はぜひ劇場で“IT”の奮闘ぶりを確認してほしい。ただ、どうかピエロを笑わないであげて。

 

 

 

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。

IT

監督 アンドレス・ムシェッティ

製作 ロイ・リー ほか

キャスト ジェイデン・リーベラー ソフィア・リリス ほか

作品詳細 アメリカ、2017年 

公式サイトはこちら

 

★こちらの映画もおすすめ!

nuwton.com

www.kabo-cha.com

www.kabo-cha.com