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視覚障害を隠して超一流ホテルマンに!実話ベースのハートフルコメディ

 

映画を紹介するとき、ジャンルを何とするか迷うことがある。ホラーかスリラーか、ヒューマンドラマかアクションか…などなど。

しかし今回ご紹介する映画『5パーセントの奇跡~嘘から始まる素敵な人生~』については、感動のヒューマンドラマにしろハートフルな人間ドラマにしろ、この一言は外せない。本作は“コメディ”だ。

 

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(公式サイトより)

 

『5パーセントの奇跡~嘘から始まる素敵な人生~』は実在の人物、サリヤ・カハヴァッテ氏の青年時代の実話をベースに生まれた物語。

主人公・サリヤ(コスティア・ウルマン)は国際的なホテルで働くことを夢見る高校生。ところが先天性の病を発症し、視力の95パーセントを失ってしまう。光は感じるしルーペで字を読むこともできるけど、すべてのものがボワンとぼやけている。いうなれば強烈に度の強い眼鏡をかけたようなイメージだ。

それでも夢をあきらめたくないサリヤは考えたすえ、なんと障害があることを隠して五つ星ホテルに応募。入念な下準備をして面接に臨み、無事研修生の椅子をゲットする。

でも問題はここから。研修はもちろんサリヤに視覚障害がない前提ですすむ。しかしベッドメイクも掃除も「こうやります」と実演されてもサリヤには見えない。一歩間違えたら指を切り落としそうな機械でハムを切れとも指示される。

サリヤは超いいヤツ(かつ超ハンサム)なので観客はもちろん彼の味方。どうするんだっ、大丈夫かっとハラハラ見守る。

 

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しかし「見えてる・見えていない」の認識のちがいが生むのはハラハラだけじゃない。カルチャーギャップにしろジェネレーションギャップにしろ、認識のちがいあるところに喜劇あり。本作はこの特殊な設定からひねり出せるギャグを、ひねり出せるだけひねり出しているのだ。

例えばあるスタッフは手を振ったのに彼に無視されたと思って落ち込むし、あるマダムはルームサービスにきた彼の前でンバッとガウンを脱ぎ捨てて見せたのに、眉1つ動かしてもらえずあっけにとられる。全編とおして鉄板ネタとして使われていた“握手”は、相手の反応も含めてぜひ注目してほしい。

 

このように本作のギャグは認識のちがいから生み出されているもので、そのベースにあるのはサリヤの視覚障害だ。冷静に考えると本作をコメディにするのにはリスクがあったかもしれない。「認識のちがい」ではなく「障害」そのものを笑っているように見えたら絶対にアウトだからだ。

また現実に視覚障害を乗り越えて夢をかなえるというのは並大抵のことじゃないし、血のにじむような努力があったはず。ならばもっとヒューマンドラマよりにして、親友もヤリチンのボンボンなんかじゃなくもっとちゃんとした人にする方向性もあったと思う。

 

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それでも“コメディ”で行く、という選択をしてくれたことに、個人的には拍手を贈りたい。なぜなら“笑い”というものは、誰かにメッセージを伝えたいとき最も役に立つラッピングだからだ。(もちろん、ギャグにちゃんと笑えるおもしろさがあればだけど…)

本作には観ている人に伝えたい明確なメッセージがある。それは「ほら!努力すれば夢はかなうのよ!努力よ~努力!」という筋肉マッチョなメッセージじゃない。

もちろん努力することで可能性を見いだせることの素晴らしさも伝えているけれど、本作がそれ以上に伝えようとしているのは助け合うことの素晴らしさだ。

誰だって完璧じゃない、だから弱点を認め合おう。一人ではできなくても助け合ったらできることがある。そういうメッセージなのだ。

メガホンをとったマルク・ローテムント監督の次のコメントからも、本作が単なるサリヤのサクセス・ストーリーじゃないことが感じられる。

 

この物語でサリヤのいわゆる「障害」は大なり小なり僕たちそれぞれが持っている欠点の鏡だ。サリヤの「騙し方」は人生を切り抜けるために僕たちの多くが使っている小さな企みや傷を表しているんだ(パンフレット)

 

認識のちがいが生む数々の秀逸なギャグで暖かいメッセージを包み込んだ本作、今年最初の一本にぜひ。

 

映画公式サイトはこちら(1月13日より順次公開)